日本では、中古マンションや戸建て、土地などを不動産会社が仕入れ、リフォーム・権利調整・商品化を行ったうえで再販売する「買取再販」が、一つの大きな不動産ビジネスとして成立しています。
インドネシアの経済成長や不動産市場に注目し、
「日本で行っている買取再販事業をインドネシアでも展開できないか」
と検討する日本企業もあるのではないでしょうか。
「日本で行っている買取再販事業をインドネシアでも展開できないか」
と検討する日本企業もあるのではないでしょうか。
しかし、日本とインドネシアでは、不動産売買にかかる税金・権利移転・法人制度・市場データ・出口戦略の考え方が大きく異なります。
日本で成立している「安く仕入れ、商品化し、比較的短期間で再販売する」というモデルを、そのままインドネシアへ持ち込んでも同じ採算になるとは限りません。
この記事で解説する5つの違い
01 売却利益ではなく、売却価格を基準とする税金
02 取得時・再販時の両方で発生する取引コスト
03 土地権利・PMA(外資法人)・KBLI(事業コード)を含めた事業設計
04 成約価格データが見えにくい市場構造
05 薄利回転より「付加価値」が重要になる
01 / TAX STRUCTURE
最大の違いは「利益」ではなく
「売却価格」に税金がかかること
「売却価格」に税金がかかること
インドネシアで買取再販事業を検討する際、最初に理解しておきたいのがPPh Final(最終所得税)です。
一般的な土地・建物の権利移転では、売主側に原則として譲渡価額の2.5%のPPh Finalが課されます。
ここで重要なのは、単純に「いくら利益が出たか」ではなく、原則として売却取引のグロス金額を基準に計算される点です。
例えば、1億円で仕入れて1.1億円で売却した場合
売買差益
1,000万円
PPh Final 2.5%
約275万円
※円換算した概念説明です。実際の納税はインドネシアルピアを基準として行われ、取引形態等によって取り扱いが異なる場合があります。

図:インドネシアの買取再販モデル概算
売買価格差が10%あっても、PPh Finalだけでその差益の一部が消えます。
さらに取得時の税金や諸費用まで含めると、必要となる粗利はさらに大きくなります。
さらに取得時の税金や諸費用まで含めると、必要となる粗利はさらに大きくなります。
「10%高く売れた=10%儲かった」ではありません。
02 / TRANSACTION COST
買うときにも、売るときにも
取引コストが発生する
取引コストが発生する
再販するためには、まず買取会社自身が不動産を取得する必要があります。
取得時には買主側に日本で不動産取得税にあたる、BPHTB(Bea Perolehan Hak atas Tanah dan Bangunan)が発生します。
BPHTBは地方税のため地域ごとに確認が必要ですが、例えばジャカルタでは、原則として5% ×(課税対象取得価額 - 非課税取得価額)で計算されます。
仕入れ
→
BPHTB
→
改修・保有
→
再販+PPh Final
さらに、Notaris・PPAT、権利調査、登記関連、改修費、管理費、金利、販売活動など、案件ごとにさまざまなコストが加わります。
したがって、日本でよく見られる「一定の値幅を確保しながら在庫を回転させる」という考え方は、インドネシアでは取引コストをより慎重に織り込んで検討する必要があります。
JAPAN VS INDONESIA
日本の買取再販との考え方の違い
もちろん、日本でも不動産取得税、登録免許税、登記費用、改修費、販売費などが発生するため、取引コストがゼロというわけではありません。
一方、日本の不動産会社が販売目的で保有する不動産は、状況に応じて棚卸資産として扱われ、売上・取得原価・改修費・販売費などを含めて事業収益を管理するモデルが一般的です。
インドネシアでは、それに加えて権利移転という取引そのものに対するFinal TaxやBPHTBの影響が大きく、薄い売買差益ほど利益が圧迫されやすくなります。

図:日本とインドネシアの買取再販モデル比較
03 / ENTRY STRUCTURE
日本企業は物件より先に
「事業ストラクチャー」を決める
「事業ストラクチャー」を決める
日本企業がインドネシアへ進出する場合、単純に「現地法人を設立して不動産を購入すればよい」とは限りません。
実際には、どの法人で、どの事業目的・KBLIを利用し、どの権利形態の不動産を取得し、どのような方法で再販売するのかを事前に設計する必要があります。
インドネシアの土地権利には、日本の所有権とは異なる制度があります。
例えばHGB(Hak Guna Bangunan)は、インドネシア法に基づいて設立され、インドネシアに所在する法人が保有できる土地権利の一つです。
例えばHGB(Hak Guna Bangunan)は、インドネシア法に基づいて設立され、インドネシアに所在する法人が保有できる土地権利の一つです。
外国資本によるPT PMAで事業を行う場合も、会社設立だけで判断するのではなく、実際に行う仕入れ・改修・開発・販売・保有・賃貸などの内容と、事業許認可の整合性を事前に確認することが重要です。
日本企業が最初に決めるべきこと
どの物件を買うかではなく、「誰が取得し、どの権利で保有し、誰へどのように売却するのか」から逆算して事業スキームを設計することが重要です。
04 / MARKET DATA
仕入れ価格より難しい
「出口価格」の把握
「出口価格」の把握
買取再販会社にとって、仕入価格を決めるために最も重要なのは「いくらで再販売できるのか」という出口価格です。
日本では、不動産取引価格情報やREINSなど、実際の成約価格を把握するためのデータ環境が比較的整っています。
一方、インドネシアでは、日本と同じように全国の成約価格を確認できる統一的な公開データ環境は十分に整っておらず、ポータルサイトに掲載されている価格も基本的には売出希望価格です。
つまり、「Rp○○で売りに出ている」=「Rp○○で売れる」ではありません。
買取会社にとって大きなリスク
出口価格を10%読み間違えるだけでも、税金・保有費・改修費を含めると事業収支が大きく変わる可能性があります。日本以上に、現地での実取引情報や買主需要を把握することが重要です。
05 / BUSINESS MODEL
インドネシアでは
「薄利回転」より「付加価値」
「薄利回転」より「付加価値」
ここまで見ると、インドネシアでは買取再販ができないようにも見えます。
しかし、重要なのは「日本と同じモデルにこだわらない」ことです。
取引コストが大きいのであれば、一案件あたりの利益幅を大きくする必要があります。
01
相場より大幅に安く取得
仕入れ段階で十分な安全余力を確保する。
02
権利整理
複雑な権利関係を整理し商品価値を高める。
03
改修・リノベーション
単なる転売ではなく、不動産そのものの価値を高める。
04
開発・用途転換
土地や既存建物へ新しい用途・収益性を加える。
05
保有+賃貸収益
急いで売らず、賃料を得ながら出口を待つ。
06
事業用・大型案件
価格差だけでなく事業価値を作る。
ポイント
取引回数で稼ぐのではなく、一案件あたりに大きな付加価値を作る。
BEFORE ENTERING INDONESIA
日本企業が進出前に確認すべきこと
① 事業モデル
短期再販 / 中長期保有 / 開発 / 賃貸併用のどれを中心にするのか。
短期再販 / 中長期保有 / 開発 / 賃貸併用のどれを中心にするのか。
② 法人・KBLI(事業コード)
誰が仕入れ、誰が保有・販売するのかをライセンスと合わせて設計。
誰が仕入れ、誰が保有・販売するのかをライセンスと合わせて設計。
③ 対象不動産の権利
SHM, HGB、区分所有、Hak Pakai、Leaseholdなど対象案件ごとに確認。↪︎権利について詳しく
SHM, HGB、区分所有、Hak Pakai、Leaseholdなど対象案件ごとに確認。↪︎権利について詳しく
④ 全取引コスト
取得・保有・改修・売却までを一つの収支表で計算。
取得・保有・改修・売却までを一つの収支表で計算。
⑤ 出口価格
売出価格ではなく、現地の実取引と買主需要を確認。
売出価格ではなく、現地の実取引と買主需要を確認。
⑥ 専門家体制
不動産会社・Notaris / PPAT・税務・法務を事前に組成。
不動産会社・Notaris / PPAT・税務・法務を事前に組成。
まとめ|日本の成功モデルを、そのまま持ち込まない
日本で成功している不動産会社であっても、日本の買取再販モデルをそのままインドネシアへ持ち込めば成功するとは限りません。
重要なのは、不動産価格の上昇率だけを見るのではなく、取得時・保有時・売却時のすべてのコストを含めて出口から逆算することです。
「1億円で買って1.1億円で売れるから、1,000万円儲かる」ではなく、1.1億円で売却したときに最終的にいくら残るのか。
インドネシアへ進出する日本の不動産会社にとって、物件探しより先に必要なのは、現地制度に合わせた事業モデルの設計だと考えています。
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賃貸/売買/建物管理/
投資コンサル/市場調査
投資コンサル/市場調査
※実績数値は2025年時点の当社集計。
参考資料・制度確認先
※本記事は一般的な制度・取引構造を説明するものであり、特定の案件に対する税務・法務アドバイスではありません。税率、課税標準、土地権利、事業許認可等は、地域・取引主体・物件・取引形態によって異なる場合があります。実際の事業進出・不動産取引では、Notaris / PPAT、税務専門家、弁護士、関係行政機関等へ最新情報をご確認ください。
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