これからインドネシアで土地や建物の購入を検討している方が最初につまずきやすいのが、「公証人(Notaris/ノタリス)」と「PPAT(土地権利証書作成官)」という、日本の不動産取引では馴染みの薄い2つの専門職の存在です。
看板が一つの事務所であっても、法律上は別の資格であり、それぞれ担当できる業務や権限が異なります。
この違いを理解しないまま契約を進めると、必要な手続きや確認事項に気づかないまま取引が進んでしまう可能性があります。
本コラムでは、これから不動産購入を検討する方に向けて、NotarisとPPATがそれぞれ何を行うのか、費用、契約当日の流れ、依頼先を選ぶ際に確認したいポイントを整理します。
公証人とPPATは「別の資格」
インドネシアでは、公証人(Notaris)とPPATはそれぞれ異なる制度に基づく専門職です。
Notaris|公証人
主な根拠法
Notaris法(2004年法律第30号、2014年法律第2号による改正等)
行政
法務省(Kementerian Hukum)・AHU
主な業務
PPJB、法人関連書類、委任状、各種契約・公正証書など
不動産取引
AJB前の契約書類や各種証書の作成などで関与
PPAT|土地権利証書作成官
主な根拠法
1998年政令第37号、2016年政令第24号による改正等
行政
農地空間計画・国土庁(ATR/BPN)
主な業務
AJBなど、土地・区分所有権の売買、交換、贈与等に関係する土地権利証書の作成
不動産取引
土地権利の名義変更登記へつながる重要な証書を作成
同じ事務所でも資格は別
実務上、同一人物がNotarisとPPATの両方の資格を持ち、一つの事務所で双方の業務を提供しているケースは多くあります。ただし、Notarisの資格を持っているからといって、自動的にPPATとしてAJBを作成できるわけではありません。
公証人(Notaris)が行うこと
購入プロセスの比較的早い段階から関与することが多いのがNotarisです。案件によって異なりますが、主に次のような書類・手続きに関係します。
✓ PPJB(売買予約契約書)の作成、公正証書化
✓ 法人を利用する場合の会社関連書類
✓ 賃貸借契約・その他関連契約の証書作成
✓ 本人が署名に立ち会えない場合の委任状(Surat Kuasa)等
海外から委任状を作成する場合
購入者が海外に居住している場合など、海外で作成する委任状については、公証・アポスティーユ等が必要となるケースがあります。
必要となる認証方法は、作成国、書類の種類、提出先、PPAT等の運用によって異なるため、署名前に提出先へ確認することが重要です。
必要となる認証方法は、作成国、書類の種類、提出先、PPAT等の運用によって異なるため、署名前に提出先へ確認することが重要です。
委任する権限の範囲も具体的に記載し、AJB署名、代金決済、登記手続きなど、どこまで代理人へ権限を与えるのかを明確にしておくことをおすすめします。
PPAT(土地権利証書作成官)が行うこと
PPATは、不動産売買の最終段階でAJB(Akta Jual Beli)を作成し、土地権利の名義変更登記へつなげる重要な役割を担います。
証明書・権利状況の確認
土地証書の内容や対象不動産の権利状況について、土地事務所等で必要な確認を行います。
土地証書の内容や対象不動産の権利状況について、土地事務所等で必要な確認を行います。
担保・負担等の確認
抵当権、差押えその他土地権利上の負担等について確認します。
抵当権、差押えその他土地権利上の負担等について確認します。
税務関連書類の確認
売主・買主双方の不動産売買に関する必要な納税・書類を確認します。
売主・買主双方の不動産売買に関する必要な納税・書類を確認します。
AJBの作成
対象不動産、売主・買主、売買条件等に基づきAJBを作成します。
対象不動産、売主・買主、売買条件等に基づきAJBを作成します。
BPNへの名義変更手続き
AJB署名後、必要書類とともに土地事務所へ提出し、名義変更登記へ進めます。
AJB署名後、必要書類とともに土地事務所へ提出し、名義変更登記へ進めます。
PBGなど建物関係書類についても、不動産の種類や取引内容に応じて確認が必要です。ただし、土地権利とは別の法令・行政手続きが関係するため、必要に応じて不動産会社、技術者、法律・行政の専門家等と連携して確認します。
AJB署名当日の流れ
AJBは、法令に定められた方式に従ってPPATが作成します。
01
本人確認・書類確認売主・買主または適法な代理人の本人確認と必要書類を確認します。
02
AJB内容の確認PPATが証書内容を確認し、当事者へ説明します。
03
署名当事者または適法な代理人と、原則として2名以上の証人の立会いのもとで署名します。
04
BPNへの提出PPATは原則として証書署名後7営業日以内に、AJBおよび必要書類を土地事務所へ提出します。
05
名義変更土地事務所で名義変更登記が進められます。処理期間は土地事務所、物件、書類の状況等によって異なります。
署名方法には注意
AJBは法令に定められた方式で作成する必要があります。署名方法や当事者・代理人の出席要件等を満たさない場合、証書の効力やその後の登記手続きに重大な問題が生じる可能性があるため、正規の手続きを遵守することが重要です。
インドネシア語の契約内容を理解する
契約書・証書の内容を十分に理解できない場合は、必要に応じて独立した通訳や法律専門家等へ相談し、署名前に内容を確認することをおすすめします。
Notaris・PPAT費用について
PPAT費用
PPATの報酬については、取引価格に応じて法令上の上限が設定されています。2021年以降は取引額に応じた段階的な上限が設けられているため、契約前に見積書と費用内訳を確認することが重要です。
Notaris費用
Notarisの報酬は、作成する証書の種類、取引・契約の内容、経済的価値等に応じて異なります。
証書作成費だけでなく、土地証書確認、登記、税務関連手続き、行政費用等が別途発生する場合があります。「総額」だけを見るのではなく、何が含まれているかを項目別に確認することをおすすめします。
依頼先を選ぶ際に確認したいポイント
① 資格・登録状況を確認
Notaris・PPATそれぞれの公式な登録状況や資格を確認します。
Notaris・PPATそれぞれの公式な登録状況や資格を確認します。
② PPATの職務地域を確認
PPATには職務地域の定めがあります。対象不動産についてAJB等を作成できるPPATであるか確認します。
PPATには職務地域の定めがあります。対象不動産についてAJB等を作成できるPPATであるか確認します。
③ PPJBが本当に必要か確認
PPJBはすべての売買で必須となる契約ではありません。
支払条件や権利関係、AJBまでに満たす条件によって必要性を判断します。
PPJBはすべての売買で必須となる契約ではありません。
支払条件や権利関係、AJBまでに満たす条件によって必要性を判断します。
④ PPJBを締結する場合の条件
解除条件、返金条件、違約金、AJB締結条件、支払スケジュール等を明確にします。
解除条件、返金条件、違約金、AJB締結条件、支払スケジュール等を明確にします。
⑤ 外国人の取得条件
外国人が取得できる不動産権利や住宅種別、取得条件等には制限があります。取引前に適法な保有方法を確認します。
外国人が取得できる不動産権利や住宅種別、取得条件等には制限があります。取引前に適法な保有方法を確認します。
契約に進む前に、専門家による事前調査を
Notaris・PPATはいずれも、不動産取引を進めるうえで重要な専門職です。
しかし、買主だけの利益を代弁する専属アドバイザーではありません。
土地証書や権利関係の確認は重要な業務ですが、購入価格が適正か、周辺相場と比較して割高ではないか、そのエリアに将来性があるかといった投資判断そのものは別途検討する必要があります。
Notaris・PPAT=契約・証書・登記手続きの専門家
不動産会社・専門家=市場調査・価格判断・デューデリジェンスを支援
不動産会社・専門家=市場調査・価格判断・デューデリジェンスを支援
デザートアイランドの不動産取引サポート
デザートアイランドでは、大規模土地、工場・倉庫、土地付き建物、分譲マンションなど幅広い分野での仲介実績があり、デューデリジェンスや環境調査にも対応しています。
MOU締結前の段階からご相談いただくことで、価格交渉を進めながら、後になって発覚しがちな権利関係・物件条件のリスクを事前に確認するお手伝いが可能です。
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本記事は、更新日時点における一般的な不動産取引の情報をもとに作成しており、個別案件に対する法務・税務上の助言を目的とするものではありません。契約方法、土地権利、証書作成、外国人の取得条件、行政上の取り扱い等は、物件・地域・当事者・取引形態によって異なります。実際の取引にあたっては、Notaris、PPAT、法律・税務の専門家および関係行政機関へ個別にご確認ください。
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