日本では、不動産会社がアパートやマンションをオーナーから一括で借り上げ、入居者へ転貸する「サブリース」が広く利用されています。
一方、インドネシアで日本と同じ仕組みをそのまま導入すると、税務上、収益性が大きく変わる可能性があります。
最大のポイントが、土地・建物の賃貸収入に課されるPPh Final Pasal 4 ayat (2)=総賃料の10%です。
CONCLUSION
先に結論
インドネシアでは、
オーナー → サブリース会社 → 入居者
という二段階の賃貸構造を作ると、
① オーナーからサブリース会社への賃貸
② サブリース会社から入居者への転貸
がそれぞれ土地・建物の賃貸取引となり、各段階でPPh Final 4(2) 10%が発生する可能性があります。
そのため、日本で一般的な「借り上げる → 転貸する → 賃料差額を利益にする」というモデルは、インドネシアでは税負担が重くなりやすい構造です。
一方、住宅ではProperty Management型、ホテルや一部のサービスアパートメントではHotel Management Agreement型とし、運営会社を「借主」ではなく「管理・運営受託者」とする方法があります。
重要なのは、PPh Finalを「回避する」ことではなく、二段階の賃貸を作る必要があるのかを事業開始前に設計することです。

日本型サブリース / インドネシア型サブリース / Property Management / Hotel Management Agreement
1. サブリースとは?
サブリースとは、不動産会社などが物件オーナーから建物や住戸を借り上げ、その物件を第三者へ転貸する仕組みです。
物件オーナー
↓ 賃貸
サブリース会社
↓ 転貸
入居者
↓ 賃貸
サブリース会社
↓ 転貸
入居者
日本では、空室リスクや家賃滞納リスクを抑え、入居者募集・賃料回収・管理業務などをまとめて任せられる仕組みとして利用されています。
オーナー側の主なメリット
・空室時でも一定の収入を確保しやすい
・入居者募集や契約業務を任せられる
・賃料回収や入居者対応の負担を軽減できる
・賃貸経営の収入予測を立てやすい
・入居者募集や契約業務を任せられる
・賃料回収や入居者対応の負担を軽減できる
・賃貸経営の収入予測を立てやすい
主なデメリット
・市場賃料より受取賃料が低くなる
・将来、借上げ賃料が見直される可能性がある
・サブリース会社の信用リスクがある
・解約条件などに制約がある場合がある
・将来、借上げ賃料が見直される可能性がある
・サブリース会社の信用リスクがある
・解約条件などに制約がある場合がある
日本ではこうした問題を背景に、2020年にいわゆる「サブリース新法」が施行され、勧誘・広告・契約前説明などについて規制が設けられています。
2. インドネシアでは「利益」ではなく「総賃料」に10%
日本との大きな違いが税務です。
インドネシアでは、土地・建物の賃貸から得る所得について、PPh Final Pasal 4 ayat (2)が課され、税率は原則として総賃料の10%です。
重要なポイント
「利益の10%」ではなく「総賃料の10%」
例えばサブリース会社が、
・入居者から受け取る賃料:Rp 1,000
・オーナーへ支払う借上げ賃料:Rp 800
・賃料差額:Rp 200
・オーナーへ支払う借上げ賃料:Rp 800
・賃料差額:Rp 200
日本の法人による通常の事業所得課税では、一般に収益から必要経費を控除した所得を基礎として法人税等を計算します。
しかしインドネシアの土地・建物賃貸に対するPPh Finalでは、Rp 1,000 − Rp 800=Rp 200を基準にするのではなく、賃料収入Rp 1,000そのものが課税ベースになります。

3. サブリースするとPPh Final 10%が二段階で発生する?
例えば、オーナーがサブリース会社へRp 100で貸し、サブリース会社が入居者へRp 120で転貸するとします。
① オーナー → サブリース会社
賃料 Rp 100
→ PPh Final 4(2) 10%
→ Rp 10
② サブリース会社 → 入居者
転貸賃料 Rp 120
→ PPh Final 4(2) 10%
→ Rp 12
つまり、2つの賃貸取引を合わせると、経済全体ではRp22相当のPPh Finalが発生し得ることになります。
サブリース会社の賃料差額は、Rp 120 − Rp 100=Rp 20です。
単純化すれば、Rp 20の賃料差額に対してRp 12ものPPh Final負担が発生する構造となります。

厳密には同じ所得に二度課税する「二重課税」ではありません。二つの別々の賃貸取引について、それぞれPPh Finalが発生するという点がポイントです。
4. 住宅なら「Property Management型」という選択肢
住宅やアパートの場合、別の方法として、オーナーが入居者へ直接賃貸し、管理会社は管理業務だけを受託するProperty Management型があります。
オーナー ⇄ 入居者
賃貸契約+管理会社
賃貸契約+管理会社
管理会社は、
・入居者募集
・契約管理
・賃料回収代行
・修繕対応
・入居者対応
・契約管理
・賃料回収代行
・修繕対応
・入居者対応
などを行い、物件を借り上げるのではなく、Management Feeを受け取ります。

この場合、土地・建物の賃貸は基本的にオーナー → 入居者の一段階です。
なお、管理報酬は賃料とは別のサービス対価として整理され、取引条件に応じてPPh Pasal 23等を検討することになります。
5. ホテルでは「借上げ」ではなく「運営受託」が一般的
ホテルや一部のサービスアパートメントでは、さらに別の考え方があります。
一般的なHotel Management Agreementでは、ホテルオーナーがホテル資産・事業を保有し、専門のホテルオペレーターへ運営を委託する構造を取ります。
オペレーターは、
・ホテル運営
・予約・販売
・Revenue Management
・人員管理
・ブランド・マーケティング
・予約・販売
・Revenue Management
・人員管理
・ブランド・マーケティング
などを受託し、Management Fee / Incentive Feeを受け取ります。

サブリース
所有 → 賃貸 → 転貸
所有 → 賃貸 → 転貸
Hotel Management
所有 → 運営委託 → 宿泊サービス
所有 → 運営委託 → 宿泊サービス
6. ホテルの宿泊売上は、通常の建物賃貸とは扱いが異なる
PP No.34 Tahun 2017では、宿泊サービスおよびその付随サービスによる収入は、土地・建物賃貸に対するPPh Final 4(2)の対象から除外されています。
つまり、ホテルの客室料金は、単純に「部屋を貸している賃料」とは税務上の整理が異なります。
PPh Final 4(2)の対象外=無税
という意味ではありません。
という意味ではありません。
ホテル事業には法人所得税や地方税など、別の税務が関係します。また、サービスアパートメントについても、名称だけでホテル扱いになるわけではなく、実際の事業内容、許認可、契約関係によって判断する必要があります。
7. コンドホテルはさらに注意が必要
通常の一棟ホテルでは、一つのホテルオーナーが資産を保有し、ホテルオペレーターへ運営を委託する形があります。
一方、コンドホテルでは、各客室を別々の投資家が所有し、そのユニットを運営会社へ提供するケースがあります。
インドネシア国税局(DJP)が紹介しているコンドホテルの事例では、投資家に支払われるGuaranteed YieldやProfit Sharingについて、実質的には投資家から運営会社へのユニット賃貸であるとして、PPh Final 10%の対象になるとの整理が示されています。
「Profit Sharingと書けば賃貸ではなくなる」わけではありません。
税務上は、契約書の名称よりも実際の取引内容を見る必要があります。
税務上は、契約書の名称よりも実際の取引内容を見る必要があります。
DJPの同事例では、コンドホテル運営会社がホテルオペレーターへ支払うManagement Feeについては、管理サービスとしてPPh Pasal 23 2%が適用される例も示されています。
8. 日本とインドネシアを比較
REAL ESTATE LAB
不動産研究所としての結論
インドネシアでサブリース事業を検討するとき、「どうすればPPh Final 10%を払わずに済むか」から考えるのは適切ではありません。
重要なのは、そもそも事業を「賃貸」「管理」「宿泊運営」のどの形で行うのかを最初に設計することです。
日本型のオーナー → サブリース会社 → 入居者という構造では、二つの賃貸取引それぞれについてPPh Final 4(2)が発生する可能性があります。
住宅
オーナー → 入居者
+ Property Management会社
オーナー → 入居者
+ Property Management会社
ホテル
ホテルオーナー
+ Hotel Management Agreement
+ ホテルオペレーター
ホテルオーナー
+ Hotel Management Agreement
+ ホテルオペレーター
というように、所有・賃貸・運営を分けて設計する方法もあります。
ただし、契約書の名称だけをManagement AgreementやProfit Sharingへ変更しても、実態が賃貸であれば賃貸として扱われる可能性があります。
そのため、インドネシアで不動産運用事業を始める際には、契約形態・収益の帰属・KBLI・許認可・PPh・地方税・Management Feeまで含めて、税務・法務専門家と事前に確認することが重要です。
Q&A
よくある質問
Q1. インドネシアでサブリース自体は禁止されていますか?
本記事の論点はサブリース自体の禁止ではなく、オーナーからサブリース会社、サブリース会社から入居者という二段階の賃貸構造を作った場合の税務負担です。契約内容、事業ライセンス、KBLI等を含めて個別確認が必要です。
Q2. PPh Final 10%が同じ賃料に二重で課税されるのですか?
厳密には同じ所得への二重課税ではありません。「オーナー → サブリース会社」と「サブリース会社 → 入居者」という別々の賃貸取引について、それぞれPPh Finalが発生する可能性があるという整理です。
Q3. Property Management型ならPPh Final 10%は発生しませんか?
オーナーが入居者へ直接賃貸し、管理会社が純粋な管理業務を受託する構造であれば、管理会社自身が賃貸人になる構造とは異なります。ただし、管理報酬にはPPh Pasal 23等、別の税務を検討する必要があります。
Q4. ホテル運営とサブリースは同じですか?
同じではありません。一般的なHotel Management Agreementでは、ホテルオーナーが資産・事業を保有し、オペレーターは運営を受託してManagement Fee等を受け取ります。
Q5. 「Profit Sharing」と契約書に書けば賃貸扱いを避けられますか?
契約書の名称だけでは判断されません。コンドホテルの事例でも、実際の取引内容がユニットの賃貸と認められる場合、Guaranteed YieldやProfit SharingがPPh Finalの対象として整理される例があります。
Q6. 事業開始前に何を確認すべきですか?
賃貸・管理・宿泊運営のどのスキームを採用するかを決めたうえで、契約形態、収益の帰属、KBLI、許認可、PPh、地方税、Management Fee等を税務・法務専門家と確認することが重要です。
参考資料
・Direktorat Jenderal Pajak「PP No.34 Tahun 2017 — Pajak Penghasilan atas Penghasilan dari Persewaan Tanah dan/atau Bangunan」
・Direktorat Jenderal Pajak「Investasi Kondotel dan Perpajakannya」
・Direktorat Jenderal Pajak「Instansi Pemerintah Menyewa Hotel, Bagaimana Kewajiban Pajaknya?」
・大東建託「サブリースについて」
本記事は一般的な情報提供を目的として作成しています。税法、運用、許認可、契約形態等は案件ごとに異なり、また変更される可能性があります。実際にサブリース、Property Management、Hotel Management等の事業を行う際は、インドネシアの税務・法務専門家および関係機関へ個別にご確認ください。
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