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日本人配偶者は不動産を相続できる?|財産分離契約と相続権を巡る憲法裁判所の争点

不動産研究所 インドネシアの不動産事情 

日本人配偶者の相続と
インドネシア不動産
財産分離契約(Pisah Harta)と相続権を巡り
憲法裁判所で審理が開始
本件は現在、憲法裁判所で審理中です2026年9月時点で最終判決は出ていません。本記事では、公開されている憲法裁判所資料・現地報道をもとに、申立人側の主張と不動産実務上の論点を整理します。

インドネシアで国際結婚をする日本人にとって、「婚前契約(Perjanjian Perkawinan)」や「財産分離(Pisah Harta)」は、不動産所有と密接に関係する重要なテーマです。
2026年9月、日本人配偶者を含む申立人が、財産分離契約と相続権の関係を巡り、インドネシア憲法裁判所(Mahkamah Konstitusi/MK)へ民法第140条の違憲審査を申し立てました。
本記事では個人のプライバシーに配慮し、当事者について以下の呼称で整理します。
A氏 = 日本人女性
B氏 = インドネシア人の夫
C氏 = 長男

図解1 国際結婚・財産分離・相続問題の流れ

図解1|国際結婚・財産分離・相続問題の流れ

01
日本人女性A氏とインドネシア人男性B氏の国際結婚
A氏は日本国籍で、1997年にインドネシア人男性B氏と結婚し、スラバヤで生活していました。
結婚にあたり、A氏とB氏は夫婦の財産を分離する婚姻契約、いわゆる財産分離契約(Perjanjian Perkawinan / Pisah Harta)を締結しました。
憲法裁判所で示されている申立人側の説明によれば、この契約を締結した背景には、外国人によるインドネシアの土地権利取得に関する制限がありました。
申立人側の主張
財産分離契約は、外国人として土地に関する権利取得に制限があることへの対応として締結したものであり、将来、夫が死亡した際の相続権を放棄する目的ではなかった、という趣旨の説明がされています。

02
夫の死亡後、相続を巡る紛争が発生
2022年10月にB氏が死亡した後、A氏と長男C氏との間で相続を巡る紛争が発生しました。
憲法裁判所が公表した事件概要によれば、2023年11月、長男側がスラバヤ地方裁判所(Pengadilan Negeri Surabaya)へ提訴。
地方裁判所では、子どもたちを適法な相続人とする一方で、A氏については相続人に含めない判断がなされ、その後の上級審でもこの判断が維持されたと憲法裁判所資料では説明されています。
ただし、これは今回の個別事案についての下級審等の判断であり、「財産分離契約を締結した外国人配偶者は一般的に相続できない」という意味ではありません。

03
なぜ「財産分離」と「相続」が問題になったのか
今回の問題をシンプルに整理すると、
「結婚中の財産を分けること」と
「死亡後の相続権」は
同じ問題なのか?
A氏側が違憲審査の対象としているのが、インドネシア民法(KUHPerdata)第140条です。
申立人側は、完全な財産分離を定める婚姻契約を締結した場合でも、それを理由として生存配偶者の相続権まで失わせたり減少させたりするべきではない、という趣旨の解釈を憲法裁判所に求めています。
これは現時点ではあくまで申立人側が憲法裁判所に求めている解釈であり、憲法裁判所がこの解釈を採用したわけではありません。

04
なぜインドネシア不動産と関係するのか
今回の事例をデザートアイランド不動産研究所が取り上げる理由は、単なる相続紛争ではなく、外国人の不動産所有と国際結婚が背景にあるためです。
インドネシアでは、外国人とインドネシア人では取得できる土地権利などに違いがあります。
WNI(インドネシア人)とWNA(外国人)が国際結婚
不動産・土地権利への影響を検討
婚姻契約・財産分離を検討
今回の申立人も、外国人による土地権利取得の制限を背景として財産分離契約を締結した、と主張しています。
その契約が、数十年後の相続紛争でどのように解釈されるのかが今回の重要な論点のひとつになっています。

05
「Pisah Hartaを結べば相続できない」という意味ではない
この点は特に注意が必要です
今回の事件だけを根拠に「インドネシア人と結婚した日本人がPisah Hartaを締結すると相続できなくなる」と一般化することはできません。
現在公表されているのは、特定の夫婦間で締結された婚姻契約を背景として相続紛争が発生し、下級審等でA氏が相続人に含まれないとの判断がなされたこと、そしてA氏側が民法第140条の解釈を憲法裁判所で争っている、という事実です。
婚姻契約の具体的な文言、相続財産の種類、適用される相続法、国籍その他の事情によって法的評価が異なる可能性があります。

06
憲法裁判所の審理はまだ始まったばかり
2026年9月15日、憲法裁判所は事件番号334/PUU-XXIV/2026について、第1回予備審理(Pemeriksaan Pendahuluan)を実施しました。
現時点で憲法裁判所が、
「財産分離契約をしても必ず相続できる」
「財産分離契約をすると相続できない」
という判断を示したわけではありません。
また、第1回審理ではA氏が外国籍であることから、外国人である申立人がインドネシア憲法上の権利侵害を理由に法律の違憲審査を求めることができるのかという当事者適格(legal standing)についても、憲法裁判官から確認・指摘が行われました。
憲法裁判所は申立人側に申立書を修正する機会を与えており、修正版および証拠の提出期限は2026年9月28日12:00 WIBとされています。

07 / DESSERT ISLAND VIEW
インドネシア不動産研究所として注目したいポイント
今回の事件は、日本人を含む外国人がインドネシアで結婚・居住・不動産取得を考える際に、複数の制度を一体として考える重要性を示しています。
不動産取得のための財産分離と、将来の相続設計を別々に考えない
婚姻時点では不動産所有だけを考えていても、20年、30年後には土地・住宅・アパート・会社株式・預金など、夫婦が保有する資産構成は大きく変化する可能性があります。
国際結婚では、少なくとも次のような論点が相互に関係します。
・国籍
・婚姻契約/財産分離契約
・インドネシアの土地法・不動産権利
・適用される相続法
・遺言
・不動産の名義
・会社株式やその他の資産

まとめ
今回の事例は、「外国人だから不動産対策としてPisah Hartaを締結する」という観点だけでなく、その契約が将来の死亡・相続時にどのような意味を持つのかまで確認しておく重要性を考える契機となる事案です。
ただし、事件番号334/PUU-XXIV/2026について、憲法裁判所の最終判断はまだ出ていません。
デザートアイランド不動産研究所では、今後も審理の進展を確認し、憲法裁判所の判断や不動産実務への影響が明らかになった段階で続報を掲載します。

参照資料・ニュース
Mahkamah Konstitusi Republik Indonesia
「Kehilangan Hak Waris dari Suami WNI, WNA Jepang Uji KUHPerdata」

憲法裁判所 公式発表を見る ▶

事件334/PUU-XXIV/2026の審理情報を見る ▶

インドネシア現地報道を見る(IDN Times) ▶

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※本記事は2026年9月時点で公表されているインドネシア憲法裁判所資料および現地報道をもとに、不動産実務上の論点を一般向けに整理したものです。本件について憲法裁判所の最終判決はまだ出ておらず、今後の審理によって内容・論点が変わる可能性があります。本記事は特定案件に対する法律・税務上の助言を目的とするものではありません。個別案件については、インドネシアの弁護士、公証人(Notaris/PPAT)、税務専門家等へご確認ください。

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