インドネシアに住み始めると、想像以上に多くの宗教行事があることに気づきます。
イスラム教、キリスト教、ヒンドゥー教、仏教など、さまざまな宗教が共存するこの国において、ひときわ大きな存在感を持つ行事が
「プアサ」と「レバラン」です。
インドネシアは世界最大のイスラム教徒人口を有する国であり、国民の約87%がイスラム教徒とされています。この背景から、プアサは実質的に“国全体が関わる行事”であると言えるでしょう。
プアサ・ラマダンとは?
プアサとは、イスラム教の重要な期間であるラマダンに行われる断食を指します。インドネシアでは「Puasa」と呼ばれ、毎年イスラム暦に従って実施されます。
インドネシア政府の宗教行政機関である、Indonesia Ministry of Religious Affairsの公式説明では、断食は日の出から日没まで飲食を慎み、信仰心を高める期間と定義されています。
なお、思春期前の子どもには断食の義務はありません。
妊娠中・授乳中・生理中の女性や、病気療養中の方は、宗教上免除が認められています。
「断食」と言ってもご飯だけではなく、原則として「日中は口に物を入れない」というのが基本です。
食べ物や飲み物はもちろん、喫煙を控える方も多く見られます。
歯磨きについても慎重になる方がいるなど、実践の細部は個人や家庭、宗教的解釈によって異なります。
日本人の感覚からすると、水も飲めないという点に驚かれる方も少なくありません。特に暑季にあたる時期は、「体調は大丈夫なのか」と心配になることもあるでしょう。
ブカプアサとは?
インドネシア語で
“Buka(ブカ)”=「開ける・明ける」
“Puasa(プアサ)”=「断食」
「Buka Puasa」は、直訳すると「断食明け」という意味になります。
つまり、日中プアサを行っていた人々が、日没とともに飲食を再開することを指します。
なお、ブカ・プアサの時間は固定ではなく、日没時刻に合わせて毎日変わります。
これは断食の終了が「日没」に基づいているためであり、
地球の自転・公転の影響により日没時刻が日々数分ずつ変動するからです。
また、インドネシアは東西に広い国であるため、地域によっても日没時刻が異なります。ジャカルタと東インドネシア地域では、同じ日でもブカ・プアサの時間に差が生じます。
そのため、近年では日没時刻を知らせるアプリのアラーム機能を活用し、正確な時間を確認する人が増えています。
代表的なアプリとしては「Muslim Pro」や「Athan Pro」などがあり、礼拝時間や日没時刻を通知する機能が利用されています。
街中では、その通知やモスクからの呼びかけを合図に、ちょうどその時刻に一斉に食事が始まる様子が見られます。
Buka Puasaの時間帯は、、、
日中は比較的静かだった飲食店や商業施設周辺が、夕方になると急に活気づき、レストランは満席となり、道路は混み合い、屋台には人だかりができ始めます。多くの人が、この時間に合わせて家族や同僚、友人と集まり、食事を共にします。
レバラン(Hari Raya Idul Fitri)とは?

レバランは、約1か月にわたるラマダン月(断食月)の終了を祝う重要な宗教的祝日です。
正式名称は「Hari Raya Idul Fitri」といいます。
Indonesia Ministry of Religious Affairsの公式説明では
イドゥル・フィトリとはラマダンを終えたことを祝う日であり、
信仰心を新たにし、互いに赦しを請い、関係を修復する機会と説明されています。
日本で例えるなら、お正月のような位置づけに近い祝日です。
この時期には「Mudik(ムディック)」と呼ばれる大規模な帰省が行われます。多くの人々が故郷へ戻り、家族と再会します。
レバランには、いくつかの重要な意味が込められています。
まず、約1か月にわたる断食を終えたことへの感謝と達成を祝う日であるという点です。ラマダン期間中に信仰と向き合い、自らを律してきた時間を締めくくる節目の日とされています。
また、「Idul Fitri」という言葉は、“本来の清らかな状態へ戻る”という意味を持つと解釈されることが多く、心身を整え、新たな気持ちで日常へ戻る再出発の機会とも位置づけられています。
さらにレバランは、互いに赦し合う日でもあります。「Mohon maaf lahir dan batin(心身ともにお許しください)」という挨拶を交わし、家族や友人、同僚との関係を改めて整える時間とされています。
このように、レバランは単なる祝賀の日ではなく、感謝、浄化、そして和解を象徴する大切な節目の日なのです。
日本人が驚きやすいポイント

ラマダン期間中は、毎日のブカ・プアサの時間帯に合わせて交通状況が大きく変化します。
この時間帯には、インドネシア特有の文化である「タクジル(Takjil)」と呼ばれる軽食や甘味を販売する露店が数多く立ち並びます。
いわゆる「カキ・リマ(Kaki Lima)」と呼ばれる屋台が歩道や路肩に増え、場所によっては通常以上の混雑や交通渋滞が見られます。
さらに、レバラン前には「Mudik(ムディック)」と呼ばれる大規模な帰省シーズンを迎えます。
この時期はムスリムの方だけでなく、企業や学校なども休暇期間に入るため、国内全体で人の移動が活発になります。
日本で例えるなら、ゴールデンウィークやお盆のような状況に近く、飛行機、鉄道、高速道路はいずれも非常に混雑します。
レバラン当日およびその前後は、多くの店舗が休業または営業時間を短縮します。特にローカルの飲食店は休業となる場合が多く、
通常営業とは状況が異なります。
また、ラマダン期間中は、アルコールや豚肉など、イスラム教において禁忌とされる商品を取り扱う店舗において、外観の照明を落としたり、商品を布で覆うなどの配慮が見られることがあります。
これは、宗教的価値観への敬意を示すための社会的な慣習です。
同様に、アルコールを提供するバーやクラブなどでは、営業時間の短縮や営業形態の調整、販売制限が行われる場合もあります。
レバラン前には、多くの企業で「THR(Tunjangan Hari Raya)」と呼ばれる宗教手当が支給される慣習があります。これは宗教的祝日に合わせて支払われる特別手当であり、インドネシアでは広く定着しています。
その影響もあり、レバラン前の時期は消費活動が活発化します。商業施設や小売店ではレバランセールが数多く実施され、街全体が祝祭ムードに包まれます。
日本人・非ムスリムとしての配慮

プアサ期間中、断食をしていない人に法的な制限はありません。
しかし、社会的な配慮や相互尊重は大切にされています。
例えば、
- 目の前で過度に飲食をすることを避ける
- 断食中の人に対して必要以上に「飲んでみて」「食べてみて」と勧めない
- お祈りの時間を考慮したスケジュール管理を行い、ブカ・プアサの時間帯に長時間の会議や残業を設定しない
といった配慮が一般的です。
また、レバラン時期には「Mohon maaf lahir dan batin」と挨拶を伝えることで、より良好な関係構築につながります。
一宗教行事はではありますが、インドネシア社会で生活する以上、
文化として互いに尊重し合う姿勢が求められます。
まとめ
日本人としてインドネシアでプアサを経験すると、最初は「我慢の月」という印象を持つかもしれません。
しかし実際には、日々の恵みに感謝し、自分を見つめ直す大切な時間であることを実感します。
レバランは、ムスリム教徒の方々にとって家族や周囲の人々と赦し合い、関係を整える節目です。
また、インドネシアはイスラム教徒が多数派ですが、国民全員がムスリムというわけではありません。
それでも互いに尊重し合い、多様な人々が共に暮らし、宗教や立場の違いを越えて支え合う姿こそが、
インドネシアの大きな魅力と言えるでしょう。
一方で、日本人にとっては長期休暇の時期でもあり、一時帰国や旅行を計画する人も多く見られます。
ただし、帰省シーズンと重なるため、航空券などは早めの手配が必要です。

最新の現地情報はInstagramでも発信中
次の記事