インドネシアで土地・建物を購入する際、日本の不動産取引にはない独特の契約プロセスに戸惑う方は少なくありません。
とりわけ「MOU」「PPJB」「AJB」という3つの書面は、それぞれ法的な意味も、買主が負うリスクの大きさも異なります。
この違いを理解しないまま契約を進めてしまうと、頭金を支払った後に権利関係の問題が発覚したり、最悪の場合は予定していた権利を取得できないといったトラブルにつながりかねません。
本コラムでは、インドネシア不動産取引における3段階の契約の違いと、それぞれの段階で確認すべきポイントを整理します。
インドネシア不動産取引の基本的な流れ
インドネシアの不動産売買では、案件によって契約構成は異なりますが、一般的には次のような段階を経て取引が進みます。
01
現地視察・物件調査
売買条件について協議し、必要に応じてMOU(覚書)等を締結します。
売買条件について協議し、必要に応じてMOU(覚書)等を締結します。
02
権利関係の確認・PPJB
ノタリス・PPAT等と連携しながら対象不動産の確認を行い、必要に応じてPPJB(売買予約契約書)を締結します。
ノタリス・PPAT等と連携しながら対象不動産の確認を行い、必要に応じてPPJB(売買予約契約書)を締結します。
03
AJB・名義変更
必要条件の充足、代金支払い、納税後、PPATによるAJBを作成し、BPNで名義変更登記を進めます。
必要条件の充足、代金支払い、納税後、PPATによるAJBを作成し、BPNで名義変更登記を進めます。
日本との違い|買主側のデューデリジェンスが重要
日本では重要事項説明などを通じて一定の情報提供が行われますが、インドネシアの不動産取引では、買主側でも対象不動産の権利関係・法的制限・境界・担保設定などを独自に確認することが非常に重要です。
引き渡し後に問題が発覚することを防ぐためにも、契約の各段階で十分なデューデリジェンスを行う必要があります。
引き渡し後に問題が発覚することを防ぐためにも、契約の各段階で十分なデューデリジェンスを行う必要があります。
① MOU
Memorandum of Understanding:覚書
物件調査を経て売買条件(価格・支払方法・支払い時期・引渡時期など)について基本合意に至った段階で、MOUを締結する場合があります。
MOUという名称だけで法的拘束力の強弱が決まるわけではなく、実際の拘束力は記載されている内容によって異なります。また、頭金・予約金を支払うケースもありますが、その金額や割合は案件によって異なります。
注意点:正式な権利確認が完了する前に資金を支払う場合は、問題が発覚した際の返金条件や解除条件を明確にしておくことが重要です。
② PPJB
Perjanjian Pengikatan Jual Beli:売買予約契約書(仮売買契約)
PPJBは、AJB締結前に売買条件を拘束するために利用される契約です。所有権・土地権利そのものはまだ移転しませんが、物件の詳細、価格、支払スケジュール、AJB締結に至るまでの条件、違反時のペナルティなどを明記します。
支払金額・支払割合は案件や契約条件によって異なり、PPJB締結時までに売買代金の一部を支払うケースもあります。
PPJBは私署証書として作成される場合もありますが、実務ではノタリスによる公正証書として作成するケースもあります。
PPJBはあくまでAJB前の契約であり、通常、PPJBだけをもって土地権利の名義変更登記を完了させることはできません。
③ AJB
Akta Jual Beli:不動産譲渡証書(本売買契約)
AJBは、PPAT(Pejabat Pembuat Akta Tanah/土地権利証書作成官)が作成する、土地権利の売買・移転における重要な証書です。
残代金、対象不動産の権利関係、必要な納税など、取引に必要な条件を確認したうえで作成されます。
AJBは土地権利移転の重要な根拠書類となり、その後BPN(インドネシア国土庁)で名義変更登記(Balik Nama)の手続きを進めます。
MOU・PPJB・AJBの違い
MOU
位置づけ
基本条件の確認・合意
権利移転
行われない
拘束力
記載内容によって異なる
注意点
支払金・解除・返金条件を確認
PPJB
位置づけ
AJB前の売買予約・条件拘束
権利移転
行われない
作成
私署またはノタリス公正証書など(ノタリスが一般的)
BPN登記
通常、PPJB単独では名義変更不可
AJB
位置づけ
土地権利移転の証書
作成者
PPAT
締結時期
必要条件・支払・税務処理等の確認後
BPN登記
名義変更手続きの重要な根拠書類
ノタリスとPPATの役割の違い
インドネシアの不動産取引では「Notaris(ノタリス/公証人)」と「PPAT(土地権利証書作成官)」という、似ているようで役割の異なる専門職が登場します。
ノタリスはPPJBや会社関連書類、各種契約・証書など幅広い私法上の文書作成を担う一方、PPATは土地権利の移転等に関する証書の作成権限を持ちます。
実務上、同一人物がNotarisとPPAT双方の資格を有しているケースが多いですが、法的な役割・権限は別です。
契約時に確認したい主な税金
買主|BPHTB(不動産取得税)
土地・建物の権利取得に課される地方税です。税率・非課税枠・課税標準の具体的な取り扱いは所在地の地方自治体によって確認が必要です。
PPN(付加価値税)
デベロッパー・PKP事業者等から課税対象となる不動産を購入する場合に発生することがあります。2026年現在、物件区分や取引条件によって計算方法が異なり、一定の新築住宅・区分所有住宅にはPPN DTP(政府負担)制度の対象となる場合もあります。
PPnBM(奢侈品販売税)
一定の条件を満たす高級住宅等が対象となる場合があります。対象・税率は物件条件により確認が必要です。
PBB(固定資産税)
売買年度の負担区分について、契約書・MOU等であらかじめ売主・買主間の取り扱いを定めておくとスムーズです。取引年度までは、売主負担が一般的です。
売主|PPh Final(不動産譲渡税)
一般的な土地・建物の譲渡では、原則として譲渡価額等を基準とした2.5%のPPh Finalが適用されるケースがあります。
税率・課税標準・優遇制度は、取引形態、物件種類、売主の属性、所在地、契約時期等によって異なります。実際の取引時にはノタリス・PPAT、税務専門家、関係行政機関等への確認をおすすめします。
日本人投資家が特に注意すべきリスク
① 外国人の不動産保有
外国人個人は原則としてHak Milik(所有権)を取得できません。Hak Pakai(使用権)、SHMSRS(区分所有権)など、物件・居住資格・取得目的に応じた適法な権利形態を確認する必要があります。PMA名義で取得する場合も、法人の事業目的や取得可能な土地権利等を個別に確認する必要があります。
↪︎ インドネシアの不動産権利関係について
外国人個人は原則としてHak Milik(所有権)を取得できません。Hak Pakai(使用権)、SHMSRS(区分所有権)など、物件・居住資格・取得目的に応じた適法な権利形態を確認する必要があります。PMA名義で取得する場合も、法人の事業目的や取得可能な土地権利等を個別に確認する必要があります。
↪︎ インドネシアの不動産権利関係について
② ノミニー名義
インドネシア人名義を借りるようなスキームは、外国人側の権利保護に重大なリスクがあるため、安易に利用すべきではありません。
インドネシア人名義を借りるようなスキームは、外国人側の権利保護に重大なリスクがあるため、安易に利用すべきではありません。
③ MOU前の調査
MOU締結・頭金支払いの前に、権利者情報、土地権利、担保設定、境界、法的制限、過去の係争等を可能な範囲で調査しておくことが重要です。
MOU締結・頭金支払いの前に、権利者情報、土地権利、担保設定、境界、法的制限、過去の係争等を可能な範囲で調査しておくことが重要です。
契約前の市場調査・鑑定評価がなぜ重要か
ここまで見てきたとおり、インドネシアの不動産取引では買主側でも十分な調査を行うことが重要であり、MOU締結時点で頭金・予約金等の実質的なコミットメントが発生する取引もあります。
つまり、最も重要な調査は契約の初期段階、できればMOU締結前に済ませておくことが理想です。
✓ 登記情報・権利者の正当性の事前確認(担保設定・差押え等を含む)
✓ 用途地域・建築規制・境界確定状況の確認
✓ 必要費用・税金関連の確認
✓ 周辺相場と比較した適正価格の鑑定評価
✓ エリアの需給動向・将来性を踏まえた市場調査レポートの作成
デザートアイランドの不動産取引サポート
デザートアイランドでは、大規模な土地、工場・倉庫、土地付き建物、分譲マンションなど、幅広い分野での仲介実績があり、デューデリジェンスや環境調査にも対応しています。
MOU締結前の段階からご相談いただくことで、価格交渉力を高めながら、後になって発覚しがちな権利関係のリスクを未然に防ぐお手伝いが可能です。
デザートアイランドの強み
🏢 代表自らインドネシアで不動産投資
代表自身が、インドネシアにおいて法人・個人の両面から不動産投資を行っており、実体験に基づいたアドバイスが可能です。
🇯🇵 日本国内でも不動産投資を実践
日本国内の不動産投資経験も踏まえ、日本とインドネシアの違いを比較しながら、投資判断をサポートします。
📍 ジャカルタ・バリ島の2拠点体制
首都ジャカルタとリゾート地バリ島の両方に対応。都市型投資からリゾート投資まで幅広くご相談いただけます。
🤝 日系仲介実績No.1
日本人駐在員・日系法人向けの賃貸、売買、投資用不動産の仲介において、豊富な実績を有しています。
本記事は一般的な不動産取引の流れを説明するものであり、個別案件に対する法務・税務上の助言を目的とするものではありません。契約方法、土地権利、税務、行政上の取り扱いは、物件・地域・当事者・取引形態等によって異なります。実際の取引にあたっては、Notaris、PPAT、税務・法律の専門家および関係行政機関へ個別にご確認ください。
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