インドネシアREIT(DIRE)は、日本のJ-REITに近い不動産投資の仕組みです。
正式には「Dana Investasi Real Estat」と呼ばれ、投資家から集めた資金を不動産などへ投資し、その不動産から得られる賃料収入などを投資家へ分配する仕組みです。
外国人による不動産の直接保有には一定の制約があるインドネシアにおいて、土地そのものを直接取得せず、不動産への投資機会を得る方法の一つでもあります。
本コラムでは、インドネシアREIT(DIRE)の仕組み、OJKによる資産運用規制、税制、日本のJ-REITとの違いについて、日本人投資家向けに整理します。
インドネシアREIT「DIRE」とは?
DIREの正式名称は、Dana Investasi Real Estat berbentuk Kontrak Investasi Kolektif(KIK-DIRE)です。
日本の上場J-REITでは投資法人型が一般的ですが、インドネシアのDIREでは、運用会社(Manajer Investasi)とカストディ銀行(Bank Kustodian)の間で締結されるKIK=集団投資契約を基礎とした仕組みが採用されています。
① 投資家
投資家はDIREが発行する「Unit Penyertaan(参加持分)」を保有します。
↓
② KIK-DIRE
運用会社が投資ポートフォリオを管理し、カストディ銀行がDIREの資産を管理・保管します。
↓
③ 不動産へ投資
DIREが不動産を直接保有する方法のほか、不動産を所有・支配する会社を通じて間接的に保有する方法も認められています。
SPCを利用した不動産保有も可能
DIREがSpecial Purpose Company(SPC)を利用する場合、OJK規則では原則としてDIREがSPCの払込資本の99.9%以上を保有する仕組みが規定されています。
DIREの資産構成・運用規制
DIREは通常の不動産会社とは異なり、OJKの規則によって投資対象や財務運営に一定の制限が設けられています。
80%以上
純資産の80%以上を不動産へ投資
20%以下
その他の不動産関連資産・市場性資産等
現金・現金同等物についても純資産の20%以下
45%以下
収益不動産取得のための借入・債務性証券
購入予定の収益不動産の価値に対して最大45%
90%以上
毎年、税引後純利益を投資家へ分配
未実現利益を除いた税引後純利益の90%以上
建設中不動産
一定条件のもとで投資可能ですが、DIREの純資産の10%以下とされ、DIREへの移転後6か月以内に収益を生むことなどが求められています。
一定条件のもとで投資可能ですが、DIREの純資産の10%以下とされ、DIREへの移転後6か月以内に収益を生むことなどが求められています。
収益の51%以上
DIREの収入の少なくとも51%は、不動産資産への投資から得る必要があります。
DIREの収入の少なくとも51%は、不動産資産への投資から得る必要があります。
更地・国外不動産への投資
更地への投資や、インドネシア国外の不動産等への投資は原則として禁止されています。
更地への投資や、インドネシア国外の不動産等への投資は原則として禁止されています。
短期売却の制限
直接・間接を問わず、保有期間が2年未満の不動産は原則としてポートフォリオから売却できません。一定の開示およびユニット保有者の承認等を満たす場合には例外があります。
直接・間接を問わず、保有期間が2年未満の不動産は原則としてポートフォリオから売却できません。一定の開示およびユニット保有者の承認等を満たす場合には例外があります。
利益の90%以上を投資家へ分配
DIREでは、毎年、未実現利益を除いた税引後純利益の90%以上をユニット保有者へ分配することが義務付けられています。
日本のJ-REITにも、一定の要件を満たして利益の大部分を投資家へ分配することで税務上の導管性を確保する仕組みがあります。制度そのものは異なりますが、不動産から得られた収益を投資家へ積極的に還元するという考え方には共通点があります。
DIREの税制|2015年・2017年の制度整備
インドネシアのDIREは、制度創設後も税務面の複雑さなどから利用が限定的でした。その後、DIRE市場の活性化を目的として税制面の整備が進められています。
2015年
PMK No.200/PMK.03/2015
一定のKIK-DIREスキームについて、SPCからKIKが受け取る配当をKIKの課税所得の計算に含めず、PPh23の源泉徴収を行わない取扱いなどが設けられました。これにより、DIREにおける二重課税問題の緩和につながりました。
2017年
PMK No.37/PMK.03/2017
一定のKIK-DIREスキームにおいて、不動産をSPCまたはKIKへ移転する際の所得について、譲渡価額の0.5%のFinal PPhが規定されています。
同規則の施行に伴い、PMK No.200/PMK.03/2015のうち、不動産移転に関する第4条・第5条は廃止されています。
インドネシアDIREと日本のJ-REITの違い
法的な仕組み
DIRE
KIK(集団投資契約)を基礎とした契約型
KIK(集団投資契約)を基礎とした契約型
J-REIT
日本では投資法人型が一般的
日本では投資法人型が一般的
不動産保有方法
DIRE
直接保有またはSPC・不動産保有会社を通じた間接保有
直接保有またはSPC・不動産保有会社を通じた間接保有
J-REIT
投資法人が不動産・不動産信託受益権等へ投資
投資法人が不動産・不動産信託受益権等へ投資
資産構成
DIRE
純資産の80%以上を不動産資産へ投資
純資産の80%以上を不動産資産へ投資
J-REIT
制度・上場規則が異なるため単純な数値比較はできないものの、不動産を中心として運用
制度・上場規則が異なるため単純な数値比較はできないものの、不動産を中心として運用
利益分配
DIRE
税引後純利益の90%以上を毎年分配
税引後純利益の90%以上を毎年分配
J-REIT
一定の分配要件等を満たすことで税務上の導管性を確保
一定の分配要件等を満たすことで税務上の導管性を確保
市場規模・流動性
DIRE
上場商品数が少なく、市場規模・流動性ともに限定的
上場商品数が少なく、市場規模・流動性ともに限定的
J-REIT
2001年に市場がスタートし、多数のREITが上場する成熟市場
2001年に市場がスタートし、多数のREITが上場する成熟市場
インドネシアのDIRE市場はまだ小さい
制度面ではREITとしての枠組みが整備されている一方、実際のインドネシアDIRE市場は、日本のJ-REIT市場と比較するとまだ非常に小規模です。
IDX DIRE LIST
3
IDX掲載DIRE
2026年8月時点
したがって、「REITだから流動性が高い」「いつでも容易に売却できる」と考えるのではなく、個別商品の売買状況や出来高、保有資産、運用会社などを確認することが重要です。
DIREへ投資する際に見るべきポイント
① 組み入れ不動産の実勢価格
取得価格だけではなく、周辺の実際の売買価格や現在の市場価値と比較します。
取得価格だけではなく、周辺の実際の売買価格や現在の市場価値と比較します。
② 賃料と稼働率
賃料収入の水準、テナント構成、稼働率、契約期間などを確認します。
賃料収入の水準、テナント構成、稼働率、契約期間などを確認します。
③ 不動産の立地・将来性
オフィス、ホテル、商業施設など、不動産の種類によってマーケット環境は大きく異なります。
オフィス、ホテル、商業施設など、不動産の種類によってマーケット環境は大きく異なります。
④ 借入・金利リスク
借入比率だけでなく、金利、借入期間、返済条件なども確認する必要があります。
借入比率だけでなく、金利、借入期間、返済条件なども確認する必要があります。
⑤ DIRE自体の流動性
保有する不動産の価値が高くても、DIREの市場で十分な売買が行われていなければ、希望するタイミングや価格で売却できない可能性があります。
保有する不動産の価値が高くても、DIREの市場で十分な売買が行われていなければ、希望するタイミングや価格で売却できない可能性があります。
「DIREの仕組み」より「中に入っている不動産」が重要
DIREはあくまで不動産へ投資するための「器」です。投資判断では、制度や配当利回りだけを見るのではなく、実際に組み入れられている不動産の価格、賃料、立地、稼働率、将来の売却可能性まで確認することが重要です。
REAL ESTATE LAB

インドネシア不動産の
「わからない」を見える化。
「わからない」を見える化。
デザートアイランドでは、宅地建物取引士およびARES不動産証券化マスターの資格保有者が、インドネシア不動産の市場調査・投資分析をサポートしています。
DIREを含む不動産投資では、組み入れ不動産の実勢価格、賃料、周辺マーケット、将来の売却可能性などを現地の市場データから検証することが重要です。
主な参考資料
・OJK|POJK No.64/POJK.04/2017
・Kementerian Keuangan|PMK No.200/PMK.03/2015
・Kementerian Keuangan|PMK No.37/PMK.03/2017
・Indonesia Stock Exchange|DIRE & DINFRA Data
本記事は2026年8月時点で確認可能なOJK・インドネシア財務省・IDX等の公開情報をもとに、一般的な制度概要を整理したものです。個別商品の購入を推奨するものではなく、投資・税務・法律上の助言を目的とするものではありません。実際の投資にあたっては、最新の目論見書・法令・税制を確認し、必要に応じて金融・法律・税務の専門家へご相談ください。
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